些細な事がきっかけだった。 云わば好奇心から始まった関係。 抜け出せなくなることが分かっていても それを止める手立てを知らなかったんだ。 an interest ここ数日、くだらないいざこざや小さな事件が頻発し、土方は公務に追われていた。屯所で朝から晩まで調書の整理。外に出来たとしてもそれは現場検証や検問といった、外出理由に仕事がつくものだった。 息抜きが出来る時間と言えば自室で夜遅く、寝る前の数十分の間だけだ。タバコを燻らせ部屋の窓から見える月を眺める。そのうちウトウトしだして、そのまま布団まで這って行って泥の様に眠る。風呂は目を覚ますために朝に入る。どんなに眠くても、体がキツくても銀時にだけは会いに行こうと思っていたが、会ったら最後、歯止めが利かなくなる。それこそ、次の日の仕事がどうなるか分かった物ではなかった。 「銀時・・・。」 月明かりが差し込む自室でまた今日も土方は一人タバコを燻らせていた。 吐き出す煙が窓から外へ逃げていく。 土方を部屋に残して。 『土方。』 耳に残る甘い声。甘味なんか比べ物にならないくらい、今にも蕩けそうな甘い響き。声を思い出すだけで、この腕に抱いていたぬくもりも爪を立てて泣きじゃくる愛らしい仕草も全てが思い出されて身体が熱くなる。 「銀時。」 名前を呼べば、返って来る吐息交じりの好きという言葉。 愛しくて何度も何度も口付けた。 「はっ・・・銀・・時・・・っ。」 咥えていたタバコはいつの間にか灰皿の中で残り短い命を燃やしていた。タバコを離れた手は、土方の自慰行為を助ける道具になっていた。 『やっ・・・も、無理ぃっ!ひじ、かたぁっ・・・!』 最後に抱いたのはもう何日前か。だいぶ経っているというのに、幾らでも鮮明に思い出すことが出来た。 声、熱、涙、快感。 全ては土方の脳内に刻まれていた。 「くっ・・・。」 情けない。銀時のことを思い出しただけで身体が疼く自分が。どれだけ銀時に依存しているかが露わになる。 「っ銀、時・・・。」 「あーあー。何やってんのコノ人。」 聞き馴染みのある声が後ろから聞こえた。 驚いて振り返ると障子を顔が半分見えるくらいまで開けて、沖田が覗いていた。 「テメっ!開ける前に一言―――」 「声かけやしたぜ?土方さんって。蚊の鳴くような声で。」 「んなモン聞こえっかぁ!!」 「普段のアンタなら気付いたと思いますがねェ。そんなに夢中に弄ったら腫れますぜィ?」 「いいから出て行け!」 沖田は障子を自分の肩幅より少し広めに開けて、その身を部屋の中へと進めた。 「てめぇ、出て行けっつったのが聞こえなかったのか。」 その声に反応もせず、沖田はただじっと土方の姿を見ていた。 着流し姿で少し足を開いて、着物の裾で下半身を慌てて隠した様子が分かる。足のすぐ傍には恐らく先程の行為の先走りの体液が垂れて染みを作っていた。右手が濡れているのが月明かりでよく見える。 「溜まってんですかィ?土方さん。」 「テメェには関係ねーだろーが!さっさと出てけ!」 沖田は土方の目の前に座ると目の前の土方の着物の裾を上に持ち上げた。 「ちょっ、オイ!!」 下半身が露わになったことに動揺した土方の一瞬の隙を突いて、沖田は土方のモノを身を屈めて咥えた。 「っ!おまっ・・・何してんだ!」 両の手で沖田の頭を押し戻そうとするが、沖田の手は土方の両太ももをしっかり捉え、動かなかった。 咥えたまま口内で舌を動かされると、土方のソレは一度萎えていたが先程まで与えられていた刺激を思い出したように反応しだした。 「くっ・・・、オィ・・・総悟っ・・・。」 沖田は無言のまま頭を前後に動かし吸い付く様に土方のモノを口内の奥から手前、そしてまた奥と移動させた。 ぬるぬるとした唾液と先走りの液が混ざり合って、卑猥な粘着質の音が土方の耳に届く。その度に身体に走る快感に土方は悔しいがだんだん手に込める力が抜けていくのが分かった。 「んっ、お前、こんなの・・・っどこで覚えてきたんだよ・・っクソガキ・・・っ。」 裏筋を舐められ、先端を指の腹で押されると、脳髄に電気が走った。 「ちょっ、待てっ・・・っ出るって・・・!」 再び頭を押し戻そうとするが、手にはもうそんな力は残っておらず、ただ沖田の髪を掻き乱す事しか出来なかった。ガキの前で射精するなんて格好悪い真似はしたくないと頑なに自身に我慢を頭の中で言い聞かせるが、迫る快感は待ってはくれない。 「っ・・・。」 「出していいですよ。俺、喉渇いてるから。」 そう言うと沖田は土方の先端を甘噛みして射精を促した。 土方の意志とは反してはち切れそうなソレはその行動に素直に反応してしまった。 「っくっ・・・ぅあっ!!!」 限界だった土方のモノは土方の努力のかいも虚しく、沖田の口の中で果てた。 コク・・・ 沖田の喉がなったのが、自分の荒い息の合間に聞こえる。それは何とも卑猥な音だった。 「総悟・・・お前・・・。」 口の端から零れた白濁の液体を手の甲で拭うと、沖田はいつものあのやる気のない目で土方を見つめた。 「溜まってたようでしたから手伝ってあげたんでァ。こういうのは一人より二人の方が気持ちイイですからねィ。」 「だからって、お前何も飲むまで・・・!」 瞬間、沖田は先程の行為でベタついた手で文句を言うその口をふさいだ。 その拍子に、力の抜けかけていた土方は畳に仰向けに倒れこんだ。 「あまり大きい声を出すと外に聞こえますぜィ。」 ニッと笑って沖田は隊服のズボンのチャックを下げる。 土方はそれを見て起き上がろうとしたが、沖田が馬乗りになっているという圧倒的不利な状態で動けるわけもなかった。年下と言えど、剣の腕は真選組一と言われている男だ。力も土方とさほど差はない。 「総悟!」 「手伝ってやったんだから、今度は土方さんが俺の手伝ってくだせィ。」 月明かりを背にしていて逆光のためよく見えないが、沖田のモノは十分な硬度を持っているようだった。 「お前・・・ソレ、どうする気だ・・・。」 「どうって、挿れるに決まってまさァ。」 「ふざけんな!テメェなんかに突っ込まれてたまるか!」 「いつも旦那に突っ込んでやがるんだろィ?たまには突っ込まれる方を味わってみたらどうですか?」 「アホか!いらんわそんな味!!」 力が戻ってきた土方はどうにかどかそうと動くが、それは次の沖田の一言で止まる。 「コレ、旦那にバラしますぜ?」 次の瞬間、沖田は土方の胸に唇を落として強く吸った。 「総悟!」 跳ね除けようとした時にはもう遅い。赤い痕が残ってしまった。情事の証拠としてよく残されるあの印。 「明日にでも旦那をココに連れてきて、この痕、見せてあげましょーか。」 ニコリと天使のような微笑で土方を見るその顔の裏には鬼がいる。土方には見えていた。 「お互いイイ思いしましょーや。別に惚れた腫れたの仲じゃありやせんし、それに、アンタが突っ込まなきゃ浮気にはなりませんぜ?」 「お前はどうなんだよ。」 「俺の相手は女ですからねィ。男とヤるならなんの問題もねぇでしょう?」 (そういうものなのか・・・?) 土方の頭の中に疑問符が浮かんだが、もう抵抗する気力は残っていなかった。沖田が四つん這いになるように促すと、舌打ちをしてそれに従った。その様子を見届けた沖田はズボンを脱ぎ去り 「利害一致。」 蕾へ舌を這わせながら笑うように言った。生暖かい舌が土方のソコに唾液を塗りたくっていく。 「くっ・・・。」 「コッチは初めてですかィ?」 「ったりめーだろ!」 徐々に舌が中に入ってきて、濡れてくると今度は細いが硬い指が入ってきた。初めて感じる違和感に土方は気持ち悪さを覚えた。 (アイツ、いつもこんな感覚なのか・・・?) 体内に入って来る異物に嫌悪感を抱いていたが中で指を上に折り曲げられると、それは全く真逆のものに変わった。 「ひあっ!」 自分でも思わず口を押さえてしまうような甲高い声が出た。コレは、いつも銀時が感じているあの場所だ。 「へぇ、結構可愛い声出しますねィ。」 「うるせ・・あっ!んっ!・・・っ総悟、テメェっ後で覚えてろよ・・・っあぁっ!」 「すいやせん、俺ニワトリ頭なんで、三歩歩くと忘れちまうんでさァ。」 一度高い声を出すと、沖田はソコばかりを狙ってくる。指はいつの間に三本に増えていた。 「気持ちイイですかィ?土方さん。」 「うるせぇ。早く挿れてとっととイケ・・・っあ!!」 言い終わる前に沖田はその硬くなった自身を土方の中に埋めた。 指とは比べ物にならない圧倒的な熱を持つそれは土方の脳髄にまで快感を駆け上らせた。 「あぁっっ!くっ・・・テメっ・・・ガキのクセに、でけぇんだよ・・・!」 「っ・・狭っ・・・。土方さん、もうちょっと力抜いてくだせぇ。」 「挿れさせてやってんだ、っ文句言うんじゃ・・・ねぇっ・・・。」 土方の内壁はしっかりと沖田を締め付け密着していた。こんな状態で動かれたら中全体に沖田のモノが擦れる。分かっていても力強く咥えてしまう。 「しょうがねぇ・・・。動きますぜィ。」 そう言うと沖田は一度腰を引いてゆっくりとまた奥へ進めた。 「うあ・・・あ・・・っ。」 一応土方を気遣ってかゆっくりゆっくりと前後運動をしはじめる。中で擦れる度土方は押し寄せる快感の波になんとか耐えていた。 「あ、あ・・・っふっ・・・。」 「はっ・・・ヤバ・・・結構気持ちイイですぜ。土方さん。」 「うるっ・・せぇ・・・!」 ゆっくりゆらゆらと腰を上下左右に揺らして入り込んでくる異物は土方の中を掻き乱していく。それは速度は遅いものの、確実に土方の理性を侵食して行った。 「んあっ!?」 ある一点に沖田のソレが当ると、土方は指でソコを突いた時と同じように甲高い声を上げた。 「あぁ、ココですかィ。ホラ。」 グッとそこに押し当てるように挿入する。 土方は身体を仰け反らせて一層甲高い声を上げてしまう。 「ま、っソコ・・・やめっ・・・ひぁっ!あっ!」 声と一緒に口から唾液が零れる。口を閉じたくても閉じられない。快感という言葉が口を開かせる。それと同時にまた土方の中は沖田を締め付けた。 「ちょっ、土方さっ・・・。」 「うあっ、あっ、ああっ!」 もう沖田の声は聞こえていなかった。理性を保っていられない。それどころか自ら腰を揺らして更に奥へ打ち付けさせようとしてしまう。それは至極無意識の行動。 「そんながっつかなくても、ちゃんと突いてやりまさァ。」 息の上がった声で沖田はそう言うと土方の腰を少し上に引き上げて、斜め上から自身を深くその中へ埋めた。 「ひっ!あぁぁっ!深っ・・・!!あっ!」 「気持ちイイならっ・・・そう、言ってくだせィ・・っ。」 沖田は土方の下腹部を押して、更に中の空間を狭くする。もう沖田のモノと土方の中に隙間がなくなるくらい。 「バッ・・・やめっ!んあぁっ!あっあっ!!」 「くっ・・・。」 もうわけも分からないくらいに掻き乱し掻き乱され、激しすぎる腰の動きに理性は一欠けらも残らなくなった。 「ぁひっ!あんっイイ、あっ気持ちイイっ!!はぁっあっ・・!」 土方は頭を抱え込み畳に額を擦り付ける。痛さなんて感じていられない。快感しか分からない。 「もっダメっ・・・!おかしくなっ・・・あっひぁっ、んっあっ!!」 「おかしくなっていいですぜィ。もっと突いてあげまさァ!」 繰り返される激しいピストン運動に、もう土方の全ては限界だった。頭が飛びそうな快感がもうそこまで迫っていた。 「そっ総っ・・・んぁっ、もっ、イクっ!あっイクぅっ・・・!!」 「んっ、俺もっ!中で、出していいですかィっ・・・?」 「はぁんっ!あっいいっ・・イイっからぁっ!!」 「それじゃ、お言葉に甘えて・・・っ。」 一度入り口まで引き戻して奥まで突き上げ、二人が一番深く繋がった瞬間 「あっんあぁぁぁっ!!!」 土方は今までの中で一番甲高い声をあげて白濁の液体を吐き出した。 締め付けられた沖田も小さく呻ると土方の中へ熱を注ぎ込んだ。 畳の上で掛け布団をかけられ寝息を立てている土方を横目に、沖田はズボンのベルトを締め、着衣の乱れを正すと静かに立ち上がった。 まだ外には月が出ている。 夜明けまで数時間ありそうだ。 「ったく・・・なんでアンタはそんなに自分を追い詰めるんでさぁ・・・。」 月明かりを背に疲れ果てて眠っている男を沖田は見下ろす。 「アンタのためならココにいる奴等は誰だって代わりに働きますぜ?」 土方から返事の代わりに寝息が返って来る。 「痕が消える頃に俺が仕事代わってやりまさァ。」 そう言って沖田は障子を開けて自室へ帰っていった。 惚れた腫れたの仲じゃない。 互いに思っている相手がいる。 断じて浮気じゃない。 けど、この感覚を味わってしまった。 もう抜け出せないことが分かっていた。 これから繰り返される快感だけの関係に 土方は足を踏み入れた。 fin. *土方受けですみません。気分を害されたらすみません。攻めで受けって好きなんです。ちなみに別に恋愛感情はありません。二人とも。雲英は沖神推奨です。 |