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「ルーク、風呂空いたぞ。ルー・・・。」

俺は濡れた髪をタオルで拭きながら洗面所から部屋へのドアを開けた。視線の先にはベッドの上で仰向けになって眠っているルークがいた。

・・・ったく、布団もかけないで。いくら気候が暖かくなってきたからって風邪引くだろ。

今日は腕を上げるために雑魚とは言え魔物と数え切れないほど戦った。ルークが先陣切って戦っていたため、恐らくその疲れが今になって出たのだろう。大きないびきを立てて眠っている。

ちなみに俺のいるこの部屋は今日は俺とルークの二人部屋だ。宿代を節約するために女三人、ジェイド、俺とルーク、の三部屋にしたのだ。ジェイドは一人でないと落ち着かないと俺達といることを拒みさっさと部屋に篭ってしまった。多分また何か難しい本でも読んでいるんだろう。物音一つ隣からは聞こえてこなかった。

「おい、ルーク。」

ルークの眠っているベッドに腰掛けて話しかける。
爆睡しているようで全く反応がない。
・・・ヨダレ垂れてるし。

「ははっ。しょうがないヤツ。」

指の腹でソレを拭ってやってルークの体の下敷きになっている掛け布団をなんとかその体の下から引きずり出してかけてやる。外から加えられる振動にルークは夢の中にいながらも小さく声を上げた。それでも起きる気配はなかったけど。

「つーか・・・。でかくなったなぁ・・・ついこの間まで俺の後くっついて歩いてたのに。」

いつの間にか前に立って、人を引っ張っていくようになった。頼りになるリーダーってわけじゃないが、ルークの中にある何かにきっともう皆気付いている。それに引寄せられて皆こいつと一緒にいるんだ。
親友で兄貴代わりだった俺をいつの間にか追い抜いて。

いつか、この手の届かないところへ行ってしまうのだろうか。



手放したくない。



髪に触れて、そのまま手を頬に添えると、唇を重ねた。

髪から落ちる滴は、シャワーを浴びていた時の温度を忘れ、冷たくルークの顔に落ちた。

唇を離して顔を上げると、ルークの目と視線がかち合った。
さっきまで閉じられていた瞼の間からしっかりと緑色の目が俺を見つめていた。

驚いて離れるとルークが目を細めて俺を見て一言

「ガイのスケベ。」

ボソッとそう言った。

掛け布団を口が隠れる位置まで両手で引き上げてこっちを見つめる。なんか物凄く申し訳ない気分に襲われるんですけど。

「ル、ルーク悪かったアレは・・・。」
「・・・しろよ。」
「え?」
「もっかいしろ。」

布団の中の口がモゴモゴと多分そんな事を言った。
しろって・・・

「キスをか?」

そう聞くと一気にルークは顔を赤くして俺の腕を掴んだ。

「それ以外に何があるんだよ。」

とんでもない殺し文句だ。これ以上はカンベンして欲しい。箍が外れそうだ。

「お前、それ他のヤツには言うなよ?」
「はぁ?何のこ―――んっ。」

布団をどかして、ルークの両手を自分のでベッドに押し付け、覆いかぶさるようにしてルークにキスをした。角度を変えて互いの舌を絡める様に深く深く。
徐々にルークの指が俺の手の中で動いて、指と指の間に自分の指を滑り込ませる。それが可愛くて間に差し込まれた指を包むようにその手を握った。それを感じるとルークもやんわりと指を折って握り返す。

「んっ・・・ぅ・・・。」

トロンと目を閉じて、誘うように舌を絡めてくるルークに理性の崩れかけた俺は片手をルークの頭の後ろに回し、少し頭を持ち上げるようにして更に深く口付けた。俺の手が離れたルークの片手は少しの間ベッドのカバーを掴むが、すぐに俺の背中に回され、服を掴んだ。

このまま・・・となだれ込みそうになる自分の理性をなんとかもう一度立て直して俺はルークから唇を離した。名残惜しそうに舌を出すルークから透明な糸が垂れて、顎を伝った。

「頭痺れた・・・。」

ルークの後頭部から手をどかして元の枕の位置に落としてやると、赤い顔で少し息を上げてルークはそう言った。また覆いかぶさる体勢で俺はそれを聞いていた。

「ガイのキス、気持ちいいな。」
「そりゃどうも。」
「ガイこそさ・・・。」
「ん?」
「ガイこそ・・・。」

言いづらそうにもごもごと呟く。

「だからなんだよ。」
「ガイも他のヤツにキスすんなよ。俺だけだぞ。」

視線を外してそういうルークを見て思わず吹いてしまった。

しないよ。するわけない。お前以外となんて。

「わっ笑うなよ!なんだよ!!」

嬉しくて。お前にそんな事言わせることができるなんて、俺って結構凄いヤツかも。

いいよ。お前が俺の隣にいる限り、俺はお前の使用人だ。

お前がするなって言うなら、いや、言わなくてもお前だけだ。


「まだまだ俺が面倒見る必要がありそうだな。」


笑ってそのままルークの上にうつ伏せに倒れこんで頭を撫でた。ルークは俺の重みに小さく声を上げた。

「ぐっ・・・重い・・・。子供扱いすんな。」
「違うよ。可愛いんだ。」
「かっ!?嬉しくねぇ!!」

俺の下でじたばたしながら騒ぐルークの唇に一指し指をそっと当てて笑いかける。するとその口は喋ることを止め代わりに真っ直ぐ俺を見つめる瞳が何か言葉を発した気がした。

自惚れてもいいか?

ソレが、好きと言っていると。


ゆっくりとその瞳も話すのを止めて瞼の間に消えた。俺はそれを合図と受け取って、静かに唇を落とした。俺の腕の下を通ってルークの両腕が背中に回る。互いの唇の柔らかさを確かめるようについばむ様なキスを繰り返す。

もう、それに溺れてしまいそうだ。

「なぁ、このまましてもいいか?」

少しでも動かせば唇が触れそうになるくらい顔を近付けて、ルークの答えを促す。頬を擦って乱れかけた赤い前髪をすいてやる。俺の中では答えは出ているものと思ったが、ルークから出たのは

「ヤダ。」

の一言。

「だよな・・・。悪い、疲れてるのに。」

疲れた体をこれ以上疲れさせるわけにはいかないか。

俺は体を起こして隣のベッドに移ろうとした。するとルークは勢い良く飛び起きて、ベッドの上に座った。

「ちっ違う!そうじゃなくてっ・・・。風呂、入ってから・・・なら・・・。」

最初の一言の威勢は良かったが、徐々に照れを醸し出しながら口ごもっていく。

ああ、もう、可愛い。

言ったら怒られるって分かってるけど、思うだけなら自由だよな。

「い、今入ってくるから、先に寝たら承知しねぇからな!!」

ルークはそう言うとテーブルの上に置いてあったタオルを手にとってドアを思い切り開けて足音も大きく風呂場に入っていった。

俺はその後姿を見送って、ドアが閉められたことを確認するとルークに聞こえないように喉の奥で笑った。

「ったく、これ以上好きにならせる気かよ。」


まだまだ手がかかりそうだと思う反面それが嬉しくてつい笑みがこぼれてしまった。


いつかお前が俺の手を離れる時が来るかもしれない。

けど、俺は最後までもがいてやる。

離れたくても離れられないように繋いでやる。

だから、覚悟しとけよ?



形振り構わず、お前を好きでいるから。








*寝ぼけながら書いたので支離滅裂だったらすみません・・・。ってゆーか短いですね。読みやすくしました。・・・嘘です。内容がないだけか?